セルフ・コンパッションって何だろう?

この記事は、2019年5月号のHBR(ハーバードビジネスレビュー)の記事を元に備忘録として残したものです。元記事に興味のある方はこちらです。
English title : Give yourself a Break : The Power of Self-Compassion
Author : Serena Chan 氏/カルフォルニア大学バークレー校 校長
English title : Self-Compassion:How to Be the Best of Your self
Author : Kohki Arimitsu 氏 関西大学院大学心理化学科教授)

Kew Garden


セルフ・コンパッションを導入する意義

運動競技から仕事まで、様々なパフォーマンスを向上させる有効な方法だと考えられており、マインド・フルネスの研究が進むにしたがい注目を集めている仏教がルーツの思想・概念のことである。

従来の問題解決では問題自体が解決しなければストレスは改善しなかった。

また、認知行動療法などを用いる心理療法では心のとらえ方を変えるアプローチもあるが、自身がうまくその改まった認識を継続しなければうまく機能せず、カウンセラーに依存するリスクがあった。複雑化する社会が我々のストレス原因の特定を困難にしてきている。

もはや多発・複雑化する問題に一つずつ立ち向かうよりも、その問題視のものへのとらえ方や自分の考え化や、受け止め方を変えていこうという考えが、仏教が注目されるきっかけとなったようだ。

このあたりの歴史はHBRを読んでいただくとよいかと。

コンパッションとは?

Compassionとは何かを同記事から引用。
仏教のあらゆる人の幸せを願い(慈)、あらゆる人の苦しみがかくなることを願い(悲)、あらゆる人の幸せを喜び(喜)、偏りのない平坦で落ち着いた心(捨)というありようこそが、コンパッションである。チベット仏教のダライ・ラマ14世は、コンパッションを自己と他者の苦しみを感じ、それを取り除こうとする深い関与であり、他者に愛情を示し助けるようにすることで、内面的な強さが高まり、恐怖がなくなると述べた。


セルフ・コンパッションレベルの高い人の特徴

同氏の研究では、自分に対して寛容になれる人のほうが、過去の失敗に対して改心し、同じ過ちを繰り返しさないというモチベーションが強いことが分かったとのこと。

具体的には以下3つの特徴があげられる。


  1. 自分の失敗や誤りに対して批評せず、寛容
  2. 人は誰でも失敗するということを受け入れる
  3. 目標未達成や失敗した時に、マイナスの感情に対してバランスの取れたアプローチ*をとる。

*残念だという気持ちは受け入れるが、そこから自責や責任追及、言い訳などマイナス感情に支配されない

セルフ・コンパッションのレベルが高いことは、成功のマインドセットを支えている。

これらの人は、失敗を前向きにとらえれて、原因を探り、どうやって次に成功できるかを考えるようになり、成長へのアプローチを取り入れる。また、自身の成長ポテンシャルを見出すために、改善を試みようとする。

対して固定のマインドセットを持つ人(性格、特徴、能力を自分自身のもの含めて本質的には変わらない」と考える人)は次も同じような失敗を繰り返す傾向があるそうだ。

リーダーシップの加速

セルフ・コンパッションはビジネスや自分が所属する組織(学校の部活動なりサークル活動なども含む)でリーダーシップを発揮する際にも使える。セルフ・コンパッションレベルを高く保つことで、相手への思いやりを持つことでもあり、真摯な対応をされれば、受け側も徐々に対応が変わっていき相乗効果で好循環を生むそうだ。

成長のマインドセットを取り入れる(すなわち、変化は起こりうると信じる)リーダーは、部下のパフォーマンスの変化に関心を持ち、改善に向けたフィードバックを与える可能性が高くなる。すると部下もリーダーが成長のマインドセットを持っていることを理解し、モチベーションや満足感が向上する。

セルフ・コンパッションの精神を育むには

この記事にたどり着いたということは、少なくともあなたはセルフ・コンパッションに興味があり、その恩恵にあずかりたいと考えているだろう。

HBRの記事では、自分のセルフ・コンパッションレベルが高く保てているかどうか、次の3つの質問を自問してみることを勧めている。

  1. 自分自身に対して寛容さと理解を示しているか
  2. 自分は欠点や失敗を、人間ならだれにでもあるものとして受け入れているか
  3. 自分はマイナスの感情を適切な視点でとらえているか?

一日の終わりに今日の振り返りとしてこれを日記や手帳に残して、見える化するとこの成長のマインドセットが身についていきやすいのではないだろうか。
例えば、自分が小規模チームのリーダーだと仮定して、夜に一日の振り返りをするならば

「今日の新システム提案のプレゼンは十分な内容ではなかったかもしれない。なぜならば、今週は別プロジェクトのトラブル対応に追われて、十分な時間を割くことができなかったからだ。こういったことは誰にでも起こることだ。トラブル対応発生時に対応できる要員を育てよう。」

といった風だ。
一日の終わりに公開ばかりが付きまとうならば、朝起きて手帳を眺めて、上の3つを読み上げたり、今日の目標の一つにするのもよいだろう。例えば、

「昨日までトラブル対応で忙しく、メンバーからの質問に十分に答えられなかったかもしれない。誰にでもこういう状況は起こりえるだろう。やってしまったことは取り消せないが、今日は出社したらメンバーに一人ずつ挨拶がてら声をかけてフォローアップが必要か聞いてみよう」

というのもよいのではないだろうか。

もしこの方法があまり自身にフィットしない場合には、別の方法を試してみるといい。

自分の今起きている状況やセルフ・コンパッションがレベルが低い状態で、ネガティブの思考から抜け出せないときなどだ。まず、それが親しい友人に起きていると想像してみる。親しい友人はひどく落ち込み、自分の価値を見失いそうな勢いだ。その時に、あなたならどうやっていたわりの言葉をかけるだろうか?

「今回のトラブルは本当に大変だった。そんな状況で完全なプレゼンをよういすることはとても困難だし、こういったことは誰にでも起こるよ。君自身の能力の問題じゃない、そんなに気を落とさないで。」

といった感じだ。

そんなにすぐにはぱっと思いつかない、ということであれば、手紙を書いてみる。

ゆっくりと机に向かってコーヒー(紅茶でもココアでも、ミルクでもなんでも結構)でも片手に、一息ついてみる。
その部屋から外をのぞむことができるなら、いちど外をぼんやりと眺めて深呼吸を3回。

さて、あなたなら、そんな親友にどんないたわりの言葉をかけるだろうか。

この備忘録の元の記事はHBRをご覧ください。

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