読書録 『エンジニアの知的生産術 - 効率的に学び、整理し、アウトプットする』

読んだ本

タイトル:エンジニアの知的生産術 ──効率的に学び、整理し、アウトプットする (WEB+DB PRESS plusシリーズ)を読んだので読書録として記録。
著者: 西尾泰和 氏(Nishio Hirokazu)
分類:ビジネス書
出版日:2018年8月24日初版

選書理由

  • 大学院の講義で紹介されたこと
  • 積読がたまり、どうにか数をこなす読み方がないか気になっていた
  • いわゆる目線を高速移動とかスキャニングする方法では、断片的なキーワードしか残らず”身になっていない”感覚が続きストレスになり始めていた

この本をおすすめする読者

  • 専門学生、大学生、社会人1年目
  • 読書法に関する書籍を読んだことがない方

本の構成

第一章 新しいことを学ぶには
第二章 やる気を出すには
第三章 記憶を鍛えるには
第四章 効率的に読むには
第五章 考えをまとめるには
第六章 アイデアを思いつくには
第七章 何を学ぶかを決めるには

所感

総じて目新しいことはないが、エンジニアが自身の磨いていこうと考えたときにぶつかるであろう、基本的な質問を網羅的にまとめたものといえる。既にこういった情報は個人ブログ等でパラパラと見つかるし、テクニック本だけならたくさんあるが、それらの情報を体系的にまとめて「知的生産術」として一つにまとめている。各テクニックは抽象化した長く使えそうな方法論などが多く、それらを使いこなすには各参照文献やサイトを見る必要はあるだろう。
何か新しいことを知ろうと思ったときに、その習得には何をするべきかを示す道標となる本かなという印象。

この中で印象に残っているところは主に3つです。

ポイント1.知識の構造化20のルール

「3章の記憶を鍛えるには」で紹介されたSuperMemoの知識を構造化する20のルールだ。

知識を構造化する20のルール

原典 Supermemo
日本語要約 | 西尾泰和のScrapbox

20個の中からいくつかをピックアップしてみると、以下のようなルールだ。

  • 理解できないことを学ぼうとしない
    例)ドイツ語が分からないのでドイツ原典の専門書を読もうとすること
  • 覚えるときは単純化して覚える
    例)単語カードに収まる単純な質問と回答とする。
  • 基礎から積み上げるほうがトータル的な時間や学びなおしのコストが少なくなる。
  • 個人の体験や感情と紐づける
  • 干渉があれば取り除く
    似たような接頭語の単語で覚えられない場合は片方を除いて、もう片方が覚えられるまで放置


何か新しいことを始めたり勉強をしようとすると、どうしても”虎の巻”が欲しくなるが、最短ルートはその知識分野をぼんやりでいいので外観をつかんだ後、徐々に詳細化して行くことが一番近道のようだ。テクニック本だけでは応用が利かない。つまり基礎がなければ応用はできないというよく言われるやつだ。

ポイント2.速読=速攻で本を読み終えるではない

第四章の「効率的に読むには」では速読法について紹介されている。数年前に速読テクニック本を読んだときには、まさしく文字通り「速攻で読み切る」というテクニックだったが、この本では速読=速攻で本を読み終えることではない。
ちなみにそのテクニック本では以下のようなテクニックが紹介されていた。
  1. 見開きページを1-2秒で5分で読み切る
  2. 目次のみ読む
  3. 目の動きは逆N字ざっくりジグザクに
  4. 日本語の本なら漢字だけ追えば意味が分かる
確かに5分とは言わないが最近の軽めのビジネス本なら概要はつかめる。
が、もう少し掘り下げた内容の書籍となると、はっきり言って、これではほんのIndexしか脳みそに残らない。少なくとも、この方法では本を読むこと自体が目的化してしまっていた。これでは確かに自分の記憶にも残らなければ知識にもならないわけだ。

本書では速読法も紹介もあるものの、本を読むための準備に時間をかける方法が紹介されている。

まず、その本を読む目的を明確化するというものだ。言い換えると、その本から知りたいことは何か?を考える
しかし質問を考えるにしても、その本の分野に全く知識がない場合はこれがうまくいかないので、フォトリーディングや以下のポイントだけざっと読んで考えるのだ。
  • 本の表紙
  • 裏表紙
  • 目次
  • 見出し/小見出し
  • 挿入された図表
  • 太字、傍線
  • 各章最後のまとめ(あれば)
質問が出来たら、その答えを探すように最初から通読する。
さらに答えが分からないところを探すように、精読する。精読は通読の2.5倍程度の時間をかける。

などと紹介されている。
本を読んだだけでは、自分の知識とはならない。そこで理解を深めるためのアウトプット法として、疑問やその答えをノートや付箋、マインドマップ等に書き出すというもの。
どのツールを使うかは、その本に求めている目的次第。例えばプレゼンや資料に使うとか論文発表に使うなどでもメモの取り方は異なるはずである。

3.さて何を学んだらいいんだろうか?

そのヒントを求めて第七章「何を学ぶかを決めるには」を開くも、これといった具体的な解はない。なんせ10年後も役立つ考え方を身に着けることをテーマとしているので、そのあたりが抽象的だ。昨今のQに対してAがポンと返ってくるような内容ではない。

ただ、学生ならば「迷う時間が1か月もあるならその間に好きなことを学べ!」であり、社会人なら「仕事に関連した分野を学べ!」である。
変動の激しいビジネスでは、一つの専門性だけでは長い社会人生の荒波を乗りこなしていくことはできない。そこでやや浅くても複数の専門性を持つことを勧めている。

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