読書録『最高の集い方-記憶に残る体験をデザインする』

『最高の集い方』は、人種問題や紛争解決に当たっているプロフェッショナル・ファシリテーターが「人が集まる会」を、ゲストにとって有意義で記憶に残るにするためのアイデアを様々な事例とともに紹介している本です。


本のタイトル
 原題)THE ART OF GATHERING - HOW WE MEET AND WHY IT MATTERS
著者 PRIYA PARKER(プリヤ・パーカー)
出版社 プレジデント社
分類 ビジネス書
発行日 2019年10月13日

1.この本を読もうと思ったきっかけ


先日
PMIPMP認定を取ったこともあり、マネジメント関連のトピックにアンテナをはっています。Project Managerに求められるスキルの一つにファシリテーションというものがあり、プロのファシリテーターがどんなことをしているのか興味がありました。
また、時折プライベートでの集まりを企画する際に人の集め方、目的、当日のホストとしての動きにいくつか気づいたことがあったからです。それは友人との飲み会だったり、学生同士情報交換会だったり、オフィスでのアップデートミーティングだったりします。
本記事では、『最高の集い』開催は一つのプロジェクトと考えて、PMBOKの5つのプロセス順で記述しています。
特にこの記事では個人的な集まりの視点で、私が気になったポイントを紹介します。



2.『最高の集い』の立上げ


2-1.
なぜ集まる?

人を集めて何らかの『会』を催すなら、その会はどんな会だろうか?友人の誕生日会、ホームパーティ、企業の転換を検討する重役会議、二国間の貿易摩擦解消?などテーマがあるはずです。もしないなら「なぜ、集まるのか?」のなぜなぜを繰り返し、その会に自分や関係者が求めている要求が見えてくるでしょう。

2-2. 何人招待したらいい?

ファシリテーター界隈では最適な規模を表すマジックナンバーあり、12以上になったら、12で割って必要なファシリテーターの数を計算すると語られています。なお、スタートアップなどの小規模組織でも12人を超えると組織内で問題が発生しやく、今までとは異なるシステムが必要になる。これを『テーブル越え時点』と呼ぶ。日本の過程で12人も座るテーブルはあまり見かけないけれど、結婚式の宴会場で大きいところだと1テーブル10-12人ぐらいのところもありますね。個人的には12人はファシリテーターがいないと全員と話し切れるないなあという印象です。



 2-3. その集まりを体現する名前を付ける

集まりに名前を付けるとその『集まり』に意味をも持たせることができ、自分だけでなくゲストの満足度を高めることができます。名前を付ける目的には、主に二つのメリットがあります。

①参加者自身が、自分にふさわしい集まりかどうかを判断できる
ある日友人にピクニックに誘われ、独身のあなたは気軽な身内の会だとワインとお気に入りの総菜をもっていったとする。ついてみると、ほとんどがパートナーや子供を連れた家族コミュニティーで、広い公園で子供たちを遊ばせて、親たちの話題は子育てや家族の悩みや情報交換で、居心地が悪くだったらどうだろう。この会に『ファミリーで持ち寄りピクニック会』とか、集まる人の属性が分かればAさんは友人やパートナーを誘って参加したかもしれないし、参加を見送ったかもしれないです。もちろん、ホストが見事なファシリテーション能力を発揮できればこれは些末な問題なのですけれど、ホストがみきれる人数も限界があるということを覚えておく必要があります。

②ホストや会のメンバーもその会の趣旨を思い出して適宜”課題”を判断できる
適切な名前が設定されていれば、会のメンバーが追加されるといった場合に、それが適切かどうかを判断うことができます。特にClosed communityならではの良さを持っている会(新卒会社の研修で沖の酒豪に耐えた仲間ならではの愚痴を言い合う会とか)ならば、新メンバーを追加するときの受け入れ判断ができるそうです。ホストやメンバーもその会の趣旨や要求がはっきりしていれば丁重に断る理由にもなるし説明にもなります。逆にその会の要求に『多様性』や『新しい刺激や発見』があるならば新しいメンバーの受け入れはOKとなります。
 

3.『最高の集い』の計画

さて、本書では『最高の集い』の実現には準備が9割!といっていますので、具体的にどんな準備があるのか、いくつかピックアップしました。

3-1. 招待準備、食事、場所などの会を開催するうえでの物理的な準備

様々なWebサイトでもよく紹介されている『ホームパーティを成功させるための10の方法』などのリストに書かれている具体的なアクションタスクです。ここで意外と見落としがちで大事だと感じたのは『会の趣旨に合った招待客の決定』『適切なサイズの場所』を選ぶことでしょうか。


3-2.
集いを成功させるための工夫


1)ゲストに事前にその集まりの趣旨やテーマなどを伝えておく
具体的にはみんなで話したいテーマや、食事の系統などがあります。
以前招待してもらったホームパーティーでは、先輩二人が同僚やパートナーをよび10人くらいで、南米旅行の写真をプロジェクターに投影して現地の生活事情(食、住)や文化について紹介してくれました。会ではモヒートなどの南米のお酒や食事がふるまわれて、天気の良い週末の夕べになんともゆったりとした時間で楽しく過ごしました。

2)ゲスト同士が初めましての場合は、各ゲストの情報まとめて事前に簡単な紹介を済ませておく
ホスト夫婦以外初めましての30人ぐらいの1 day 観光&ディナーに参加した時のこと。事前にホストから簡単な自己紹介を送ってほしいといわれて、当日合流したら移動のバスで自己紹介を配られました。あれがあったおかげで初見の人とも、着席2時間のフルコースディナーでも、お互いに会話のとっかかりがしやすかったのをよく覚えています。

3)その場限りのルールを設ける
同書ではマナーとルールについても触れており、多様性が広がる現代において”私のマナー”は”友人のマナー”ではない可能性が出てきました。集まりを成功させるためには『盛り上げるための一時的なルール』を決めることも大切だという意見には賛成です。その例としてディネ・アン・ブラン(Diner en Blanca)のように『全身白のフォーマルで参加』『食器、テーブルクロスはすべて白の陶器』ななどのルールも楽しみながら受け入れてることが『最高の集い』への一つのアイデアだとしています。


4.『最高の集い』の実行

さて『最高の集い』の当日です。
ゲストが到着したら、暖かく迎え入れて、上着を預かり荷物をどこに置いたらいいかを伝えます。
体調等で飲み物の制限がないかを聞いて、用意しているドリンクを渡します。(アルコールかノンアルコールか)ちなみに私の場合はアルコールを身体が受け付けないことが割と知れているので、なじみの人たちの会ではノールックで大好物のジンジャーエールが手渡されます。
初見の人たちや部署違いの同僚などの間柄の場合は、既に集まっているゲストたちと到着したゲストを紹介します。それぞれの紹介はその人の仕事や職位ではなく、個人的な印象やゲスト同士の共通点について紹介できるとよいです。ただし、簡潔に!食事になかなかありつけ居ないのではゲストは苦痛かもしれません。

5.『最高の集い』の監視・コントロール

監視・コントロールなんて言うと堅苦しい印象かもしれませんが、要はホストとして『最高の集い』にするために仕切ることです。本書で最も大事だと思ったことは『ホストとしてゲストに満足してもらうように場を仕切り、ゲストに敬意を払い、時に”声の大きいゲスト”をたしなめる』というものです。これの逆のスタイルのホストは『生全体にすること』としています。ここでの自然体とは『ホストは場の流れに身を任せており、ゲストにその集まりに満足して記憶に残るような体験をしてもらうことを放棄する』ということだとしています。ゲストはホストのテーマや趣旨に賛同して貴重な時間を割いて参加してくれるので、集りの趣旨の中でゲストに何かを得て帰ってもらいたいという姿勢で適宜ルールやゲーム、話題を投入していくことが勧められています。

6.『最高の集い』の終結 

宴もたけなわ、『最高の集い』の幕引きをどうするかのが良いかというと、実はこの本ではピンとくる内容はなかったです。
研修などであれば、研修内容の総括やこの後や明日からどう取り組むか?などの語り掛けを交えて送り出すが紹介されていますし、これは満足度の高かった講習会で聞いたことがあります。
ホームパーティなどのカジュアルなものであれば、日本の住宅事情から場所替えは難しいので、食事を下げてフルーツやデザートなど、日本の食事で終わりで締めをイメージしやすいものに移行して、コーヒーやお茶に切り替えるという方法はありかと思いました。
ゲストが帰宅する際にはホストが見送り、今日来てくれたことや持ってきてくれたもの(食べ物・飲み物でもいいし、ゲームや話などでも
OK)へのお礼を告げることで、ゲストは気持ちよく岐路についてくれるでしょう。

7.まとめ

全体として、個人の集まりから紛争地域の国々の若者を集めたワークショップなど幅広い例が簡潔に紹介されており、どんな集まりを企画している人でも一つぐらいは当てはまる例が見つけられるのではないかと思います。
当初期待していた『ファシリテーションの具体的なテクニック』は紹介されていないので、ファシリテーターの仕事としてコアコンピタンスや具体的なツールを使った事例、イベント開催のSTEP BY STEPなら別の本を探す必要があります

一方で、過去に小規模でもイベントを企画したことがある人がこの本を読むことで、ゲスト視点でより良い集まりを開催するためのヒントが見つかるでしょう。実際に私が過去に一度『自然の流れに任せた集り』を開催して声の大きなゲストが酒の勢いで一人オンステージとなって場が白けてしまったという苦い経験があり、ホストとしての責任を放棄してしまったということに改めて気づかされました。

個人的に私のお気に入りの話は『15の乾杯』の元イベントで『自分が考えるいい人生』について語りそれを乾杯するか、話したくなければ一曲歌うという催しです。

三番目に乾杯した男性は、彼が思ういい人生の三つの要素を教えてくれた。それは自分のために働き、他人のために働き、そして楽しむこと。そして最後に「三つのうち二つそろえば上々」と言いながら、グラスを上げた。すると誰かが突然、節をつけて『三つのうち二つそろえば上々だ』と歌いだした。そこで是認が笑い出した(三つのうち二つに乾杯!」)。ゲストの間にリラックスムードが漂い始めた。

こういう風に、自分では考えもしなかった考えや表現に刺激を受けて、楽めるリラックスムードな集まりは『最高の集い方』でいつかできるようになりたいものです。

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