読書録『あなたはあなたが使っている言葉でできている』

 この本は、今の自分の人生がうまくいっていない人と感じるひとたちが、自身の人生を変えていくために必要な行動をおこすための、積極性を引き出すコーチング本です。

アメリカのビジネス書によくある小難しい理論や研究データを延々と読むようなものではなく、セミナーで講師が語りかけているような口語文で構成され、軽快なテンポとニヤリとするユーモアのある本です。

大体1時間から1時間半ぐらいで読むことができましたので、難解な技術書やビジネス書の合間の息抜きにも読めるのではないでしょうか。


本のタイトル

あなたはあなたが使っている言葉でできている/Unfu*k yourself

著者

ゲイリー・ジョン・ビショップ/Gary John Bishop

出版社

ディスカヴァー

分類

(ビジネス書、技術書など)

ビジネス書

発行日

2018年10月19日


この本を読むきっかけ

夏休み期間に何か軽めのビジネス本でも読もうとでかけた大型書店に平積みされていたこと、邦題「あなたはあなたが使っている言葉で出来ている」というタイトルに興味をそそられました。このタイトルからネガティブ思考からの脱却とか、ポジティブ思考で人生を豊かにするといったありきたりな本かなと思ったら、パラパラ読んでみるとどうもちょっと違うみたい。
実は私は大学院在学中に転職したのですが、語学面で苦戦していました。このところネガティブ思考になってきているなと自覚しており、なんとかこのループから抜け出したいと思っていました。モチベーション関連情報は世にあふれており、超訳「Be positive!でいこうぜ!」といったものもあれば「人間の心理学と行動学面でみると・・・」といったスタディーが列挙された難解なももあります。いずれにしても、もう少し自分にあったネガティブ思考からの抜け出し方がないかなあという淡い期待もありKindleで購入。

本書で気になったポイント

本書で一貫して言っているのは、問題を前にして立ち止まらず行動すること。

はっきり言おう。死の床のあなたが後悔しているのは、何も成し遂げられなかったとか、目的のものが手に入らなかったとかいったことじゃない。 挑戦しなかったことだ。 がんばらなかったことだ。つらくなったときにあきらめてしまったことだ。

誰だって、今から死ぬときに後悔したいとは思わないでしょう。
なにから手を付けたらいいかわからないなら、その方法を調べるところから始めるのだっていいのです。
では、行動するためにはどうしたらいいのか?そのヒントとなるものが、本書では自分自身を取り戻すための7つのアサーティブなキーワードと、偉人の言葉とともに紹介されています。 

①「私には意志がある」 

よくあるモチベーション維持や悪癖改善などの書籍では、あるべき理想を描いて、その目指すべき姿に向けて行動を続けるためにご褒美を設けるとかルールを決めるというものがあります。輝かしい未来や楽しい部分だけに思いを馳せて、続けることができればよいのですが、この方法は人を選ぶし、長続きしにくいという欠点があります。
本書では、なにも自分の行動を変えるために常にポジティブ思考にする必要はなく、ネガティブのパワーを活用しすることもできると言っています。

たとえば「毎日英語の会議で全く理解できず、同僚に助けてもらうばかりの日々には気が重い・・・こんな状況は耐えられない!」 というネガティブな思考があったとします。
一見ネガティブだなあ、この人はと思うかもしれませんが、見方を変えるとこのネガティブな思考から現状の課題(=英語での会議についていけないので、自身で理解できるようになる必要がある)を見つめて、一つずつタスクをこなしていくことが、私自身が行動し続けることにもつながります。
大事なことは「今までのうまくいっていない人生に言い訳をしないこと」です。幼少期の環境、両親、他人のせいとか、そういったことは脇に置くことです。行動するという強い意思を持つということ。自分の人生、自分でハンドルを握らなければ!

② 「私は勝つに決まっている」

これは一見、熱血アスリートでも気合で押せと言っていると誤解されそうですが、そうではありませんので、一瞬引いた方はご安心を。
本書では、人間は自身が「自分とはこういう人間だ」ととらえている思考が、正しいものであると証明する行動取るものだといいます。その仮説した思考が証明された状態が「勝ち」状態です。
人間の思考は、ポジティブであればネガティブであれその考えに支配されているとき、その考えがあたかも自分自身であるかのように振る舞うようになるのだそうです。ここが邦題の「あなたはあなたが使っている言葉で出来ている」につながる話ではないかと思います。
ネガティブな思考のままとらわれていると、自分の行動もその仮説した思考を体現するようになるし、ポジティブな思考もしかり。
内容としては他の書籍でも聞いたような話ですが、良くも悪くも自分の思考の正当性が証明できる状態が「勝ち」という表現が面白いなと思いました。

私の語学のたとえを上げるとするとこうなります。

ネガティブ思考の仮説

仮説

付随する行動

ネガティブ思考

「あー・・・今日も英語聞き取れなかった。自分は能力もなくここで役になっていないに違いない。仕事したくないなあ」


仕事へのモチベーションが落ちて、どうせやっても無駄だと行動しなくなる。

結果として自信喪失、果ては休みや転職につながる可能性あり。

ポジティブ思考

「今日も英語を聞き取れなかった部分があったけれど、入社1か月目と比べたら質問もできるし聞き取りが出来るようになってきた。このまま勉強を続ければみんなのように積極的な議論が出来るようになる。」

モチベーションをもって、スキル向上への行動を継続する。
長期的には語学力の向上と自信回復などが期待できる。

③「私にはできる!」

人間の意志はほぼ自動操縦であり、その自動操縦化の意思決定は経験や知識に基づいて判断されているそうです。この時に、先入観が私たちの実現したい道を阻み「どうせ自分には無理だ」などと簡単に頓挫させます。 自分を変えたいならば、本当に自分には変える意思があるのかを問うことも大切です。
ここで大事なことは「XXXしたい」ではなく「私にはXXできる」「XXXする」と言い切りすること。
たとえば「風呂上り、寝る前のアイスをやめてスッキリとした体型になりたい」ではなく「風呂上り、寝る前のアイスをやめる。私にはそれができる。」という表現をつかうのが良いです。
余談ですが、英語圏での新年の抱負というのは、達成できない問題や悪癖を断ち切る内容をあげるケースが多く日本の新年の抱負とはちょっと意味合いが違います。彼らの新年の抱負は、本当にその悪癖を断ち切ってお別れする気があるのかを問い、毎年自身に誓っているのです。(実現できているかどうかはともかく・・・) 

 ④「先がわからないからおもしろい」 

日々変化するこの時代に、とにかく今すぐ行動することが肝要です。計画や予想通りじゃないからと立ち止まってはいけません。
「今はその時ではない・・・」
などとドヤ顔で言っている場合ではないのです。
今日でもなく明日でもなく、このブログを読んだ打でもなく、今・すぐに・やりましょう。

⑤「自分は思考ではなくて行動だ」

 感情はよそにおいて、とにかく行動する!やりたいとかやりたくないとかの思考は現実ではなく、ただの考えです。考えでいるうちは、ま何も実現されていないのです。そのただの思考から切り離し、行動しましょう。

⑥「私はがむしゃらになる」 

 窮地に追い込まれたときでも歩みを止めないこと、がむしゃらさは、人を動かす燃料になります。 がむしゃらといわれても一体どうしたら・・・とおもったら「マインドフルネス」が役に立ちそうです。今この瞬間目の前のことに集中して取り組む。これだけです。

⑦「私は何も期待せず、すべてを受け入れる」

なにも「すべてをあきらめろ」・・・とか「与えられた場所で頑張れ」とかそういう話ではないです。なぜ人は、がっかりすると、継続する歩みをやめてしまうのか。それは、期待した未来と現実とのギャップがあり、それが大きければ大きいほど打ちひしがれるのです。
変化する日々の状況が、自身の計画通りにいかなくても憤ったりせず、目の前の状況を見て、その状況を受け入れて取り組めばよいのです。
プロジェクトマネジメントを勉強した方やプロジェクト管理をした方であれば、ウォーターフォールプロジェクトよりも、アジャイルプロジェクトのマインドセットで考えるとイメージしやすいでしょう。 

まとめ

この手のセルフコントロールや自己実現などを他の書籍や講義等で学んでいるとあまり目新しさはないものでしたが、 私には相性の良い本でした。
本書で紹介されている悪癖や思考は、だれも自分のことを言われているのか?と思えるものがあるのではないでしょうか。そういった意味で、自分事で読み進められるのも読みやすさにつながっているのかもしれません。
この本では、ネガティブ思考からの脱却方法は見つかりませんでしたが、それもそのはず「自分自身を取り戻し自分で未来を切り開くためのエール本」です。どちらかというと原題のほうが分かりやすかったかもと思わないでもないです。
この本は、まるで自分に伴奏するコーチがいて、いろんな言い訳で実現できない自分を叱咤激励してくれる、そんな本です。ネガティブ思考を持っていてもいいし、それが継続するためのエネルギーになるというのはすこし自分の中のつっかりがとれたような気分です。スポーツアスリートの松岡修造氏も、熱血だとイメージしている方もいるかもしれませんが、彼はさまざまなインタビューでネガティブ思考だと言っています。彼の著書やインタビューを読んだ方なら、この7つのキーワードが腹落ちしやすいかもしれません。

なお、もう少し人間の不合理な行動について研究データの裏付けとともに読みたい方は、 

コメント